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December 05, 2005

「東アジアの未来構想と我々の役割」

 昨日のパネルディスカッションのためにいただいた、嚴 敞俊(オム チャンジュン) 氏(立命館大学講師)による資料です。

『 アメリカの国家情報委員会は昨年末、「Mapping the Global Future」という報告書を発表した。2020年には中国が米国とともに、世界経済を引っ張るだろうこと、インドが経済大国に浮上することを予測している。中国は2020年に「全面的小康社会(文化的に余裕のある国民中流社会)」建設を目標にしている。予測によると、中国のGDPは2020年に4兆ドルと日本を抜いて世界第二の経済大国になる(ただし、ゴールドマンサックスなど投資会社は7兆ドルと見て、米国をも抜くと予想する。)報告書は、15年後の中国が目指す方向、日本と韓国の選択、アメリカの対応戦略がアジアの未来を左右するとしている。
 一方、インドは2020年、2兆ドルを達成して世界四位の大国になる。ASEAN10ヵ国の経済規模は現在、韓国と同じ規模であるが、6億人口が一つの経済として統合する2020年にはもう一つの経済強国に浮上するはずである。ロシアもBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国という次の経済大国)の一員として台頭する事は間違いない。東アジアの経済地図が全面的に塗り替えられるのである。すでに始まっている。
 
 中国とインドは今年、国境紛争をまとめ、30個に至る政治・経済・文化協力協定を締結して、チンディア(Chindia)の世紀を約束した。ロシアと中国も全面的パートナー関係を宣言し、米韓軍事演習と同時期・同海域で、中ロ合同演習を実施した。
一方、韓国は米韓同盟を維持しつつも、次第に日米に距離を置き、朝鮮と中国、ロシアに接近し、中間的立場を取ろうとしている。ASEANは中国と日本を秤にかけている。ASEANは、日本の国連常任理事国入りへの署名国要求に対し、中国の圧力の下、署名を見送り、結果的には日本の期待を裏切った。
 米国は日米同盟を強化するというが、日本に負担増を要求し、東アジアから徐々に撤退しようとしている。次の大統領選挙で民主党候補が勝利するとなれば、アジアへの直接介入は目立つ形で減る事が予想できる。米国にとって、日中の対立は好都合ではあるが、負担にもなる。中国をどう見るかであるが、米国の中国観に変化の可能性は大いにある。
 日本は、1995年を転機に、急速にアジアから遠ざかっている。最近は焦りからか、前に述べたような事例からもわかるように、勇み足もよく見られる。高姿勢を取ることは票になるかも知れないが、そうすればするほど、アジアからの孤立は進行する。
 
 しかし、それでもアジアで人権や民主主義の面で合格点をもらえる国は日本と韓国ぐらいしかないのが事実である。中国や朝鮮の人権弾圧は有名であるが、改善の見込みはほとんどない。東南アジアの人権抑圧はあまり注目を受けていないが、中朝に劣らない。近い将来、経済大国になるだろう国が非民主的であり続ける事は大変困った問題である。経済の発展とともに、徐々に改善していくことも期待したいが、外圧も必要である。ただし、アメリカのような強圧的介入ではなく、あくまでも建設的介入である。
 
 日韓の市民はアジアの人権と平和、民主主義のため、連帯する義務がある。建設的介入の第一歩は、いうまでもなく、自分の襟を正すことである。韓国も日本も、自国の過去の問題をクリアしていない。少なくとも努力しなければ、他人に介入できる道徳的根拠を得る事はできない。現在の日本が中国や朝鮮の人権弾圧を非難することは自由だが、説得力はあまり認めてもらえず、むしろ反発を買うだけかも知れない。
 日韓の連帯は従軍慰安婦問題、歴史教科書問題への対応で有効性が確認された。今後は日本の積み残した問題に限らず、世界の平和と民主主義にかかわる幅広い課題への協力が必要である。そのためには、緩やかなものでいいから、市民運動のネットワークを至急作ることである。言語ができる人材の養成も必要である。問題の国際化が進む以上、市民運動もグローバル化が必要である。』
 
 全6頁中、5頁後半部分から6頁最後までです。
 「季刊 アジェンダ」の創刊号、第5号に寄稿されていますので、詳しくはそちらをご覧いただけるでしょうか。

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Comments

 なにかこう、自分にとって都合のいい資料だけをならべてみたって感じですね。
 30年前の印中の国境紛争で敗れて以降、いまでもインドにとって中国共産党は敵対的存在です。いまも、インド沿岸には中華人民共和国の攻撃型潜水艦があらわれ、それに対してインドはロシアから空母を購入するなど、軍事的緊張はつづいています。無論、ネパールにおいてもブータンにおいても、両国の緊張関係はつづいています。
 インドと中国が経済的に結びつくことは緊張関係を和らげることからも歓迎すべきことですが、これをもって両国の関係が友好的になったというのは早計でしょう。
 一方で、アジアの民主国家を韓国・日本の両国だけだと限定していますが、韓国よりはるか以前にインドは民主主義的な国家の建設をおこなっています。
 この講師は、東アジアだけを見てアジア全体を語ろうとしているのではないでしょうか?「アジア」を強調するのならば、東アジア・ASEANだけでなく、南アジア・西アジア・中央アジアも踏まえて語るべきだったのではないでしょうか?

 日本が1995年以降アジアから遠さがっているのではなくて、いままでの対中華人民共和国、対韓国、対北朝鮮の政策を変えただけでしょう。一方で、台湾・シンガポール、東チモール、インド、カンボジアなど結びつきが強くなった国も数多くあるし、APECや今回の東アジアサミットにおける中国との主導権争いを見ても、アジアから離れつつあるとはとてもおもえないのですが。

Posted by: 和田歩人 | December 12, 2005 16:05

 申し訳ないです。確かにこれだけ読むと「アジア」と「東アジア」の区別があいまいですね。
 この資料の前半部分は「拉致問題」「東シナ海ガス油田開発問題」「靖国問題」についてです。
 タイトルと合わせて、その続きで読んでいたので、何も考えていませんでした。
 
 当日に買えばよかったのですが、今日、駅前の書店でアジェンダを探したら、置いてないとのことだったので、注文してもう少し私もよく読みます。
 
 パネルディスカッションのときに、和田さんくらい意見を言ってくださる方があれば、もっといろいろ聞けたのでしょうけど。

Posted by: winter-cosmos | December 12, 2005 19:29

 アジェンダを置いている書店に行きましたが、在庫が最新号しかありませんでした。
 代わりに、ダイヤモンドの別冊がおもしろそうだったので買いました。
 →http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=20248011006
 帰りの電車の中で少し読みましたが、↑の内容の補足にはなりそうです。

Posted by: winter-cosmos(和田さんへ) | December 13, 2005 18:21

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